タイトルバー‘彌光庵’
 
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寺としての彌光庵(みこうあん)

 いつもJazzが流れ、食欲をそそる料理の匂いが漂い、ネコがあくびしている心地よい空間。カウンターでたまたま隣り合った客と話が弾み、言葉や文化の違う人ともいつのまにか仲良くなってしまう。彌光庵はそんなお店だ。そしてまた、お酒のボトルにはひとつひとつ数珠がかけられ、酒棚の上からご本尊の阿弥陀さまが見守っている。そう、この店はお寺でもあるのだ。

 彌光庵が開店、いや開庵したのは、1995年4月8日、お釈迦さまの誕生日(花まつり)だ。庵主の工藤美彌子は1989年に得度(僧侶になる儀式)を受け、親鸞を宗祖とする浄土真宗の僧になった。しばらくは寺で役僧(アルバイトのお坊さん)を務めていたが、「一般の人には敷居の高いお寺で説教するより、同じ目線で人々と向き合って仏法を伝えたい」と思い、開店を思い立ったという。

 彌光庵の基本理念は、まず「いのちを大切にすること」。とりわけ「非戦」はもっとも大切なメッセージだ。2002年から毎年2月、下京区のパーカーハウスロールで「非戦平和音楽法要」を行っているほか、2004年9月には庵主が発案して「みんなで創る非戦・平和ライブ」を円山音楽堂で挙行。店には学習会用の部屋もあり、平和や環境を考える市民の交流の場にもなっている。もうひとつの理念は「佛との出会い」。すなわち、酒を飲むことを通して、戒を守れない凡夫であることに気づき、どうすれば救われるのかを自分で考える。人は煩悩を抱えたまま往生できるという親鸞の教えに基づいている。

 さらに「精進」。身近にあるもの、季節のものを生かし、工夫しておいしい食べものをつくる努力をする。料理はすべて、なるべく農薬を使わないで育てた野菜を中心にした精進メニュー。浄土真宗は肉食を禁止していないが、「この店にいる間だけでも肉や魚を断って、いのちの大切さを考えて」という願いがそこにはある。そして「ゴミを減らす」。使い捨ての割り箸やストローなどを使わない。野菜の皮や屑なども食材として再利用し、なるべく生ゴミを出さないようにする。それでも残った生ゴミは土に返す。こうした理念は、店に一歩足を踏み入れ、料理に舌鼓を打つだけで実感できる。

 そう、彌光庵は決して「説教くさい」店ではないのだ。  (Text by Jugon)